ニュース『日本の貧困率、過去最悪の１６％』で思うこと。

———–<今日のニュース>———-
日本の貧困率、過去最悪の１６％
http://www.asahi.com/national/update/0712/TKY201107120697.html

———–<今日のニュース　終了>———-

数年前、都内IT会社社員の時。土曜夜８時に居酒屋にて。
夕飯代わりに男２人で入った居酒屋。自分ともう一人は23歳の同じ会社で
働く男の社員。１年ほど前に入社の彼は関西の有名大学を卒業していたが、
就職氷河期で就職に失敗しこのIT会社に我慢して入ったという。そんな彼が
ビールを飲み干した後にぽつりぽつりと話し出した。

先輩、もう自分はダメです。今度の春くらいには田舎に帰ろうかと思って。
－そうなんだ、でも実家に居られる？仕事は？
たぶん、居られます。仕事はバイトでもします。
－でもなんで。まぁわかってるけどさ。
全部です。給料も仕事も立場も東京の生活も全部です。
給料なんか手取り9万5千円っすよ。家賃補助2万円あったって残り3万5千円は
自分で払うからその分引かれてこの金額。うちの会社は残業代も休日出勤も出ない
じゃないですか。で、この前、時給計算したんですよ自分の。月に300時間くらい
働いてて手取りで計算すると300円ちょっと。１時間働いてもこのビール１杯で
終わりですよ。
－まぁそんなもんかな。じゃあなんとか生活はできるわけか。
生きてるだけですよ。職場から１時間電車に乗って駅から徒歩30分。帰りに
弁当買って部屋で食べるだけ。あとは遅いから寝るだけ。
－部屋はきれいにしてる？
掃除はしてますけど、5万5千円のアパートって東京だとかなりボロいんですよね。
天井に染みもあるし部屋の畳は踏むと沈むし。
だいぶ前に大阪に居た時の彼女が遊びに来たんですけど、部屋を見て
しばらく黙ってましたよ。で、彼女『カーテンの柄が良いね』って。
褒めるとこ探してたんですよね。それが分かるからなんか悲しくて。
－彼女居るんじゃいいな。将来は結婚とかもあるんじゃない？
ありえないですよ。２人で働いたとしてもカツカツです。デートしたって
何も買わないし食事だってマクドだし。そのせいかどうかわからないですけど、
最近は彼女からの電話も少ないし。
－仕事は楽しい？
楽しくないですね。自分はこのIT会社の社員のつもりだけど、実際は大手携帯会社
に常駐の派遣でしょ。しかも４次受けだし、自分の会社名出すなって言われてるし。
最初は訳わかんなかったけど、やっとわかってきましたよ。仕組みが。
そこでの自分の単価は時給2500円で残業代も出てるわけだけど、
自分がもらうのはいつの間にか300円ちょっとになってるんですね。
それに同じ年に大学出てその携帯会社で働いてる人いるんですけど、
その人と自分とは明らかに違うんですよね。
－何が？
身分ですよ。
－そうだな。わかるよ。
このまま数年たって給料が2～3割増えても、10年たって倍になったとしても
この仕事は続けられませんね。人間がダメになっちゃう。
－あとは趣味に生きるとか。学生の時乗ってたバイクは？
売って出てきたんですよ、東京に。でも売るんじゃなかったな。もう２度と
買える気がしないですね。車なんてとんでもない。
－たまに帰省してるんだろ
夏に帰ったんですけど、ボーナスはそれで消えちゃいました。
東京に戻る時に両親が封筒渡してくれて、新幹線代だって２万円。
夜行バスの中でその封筒見て泣いちゃいましたよ。
田舎に帰ろうかな。なんて。
－まぁ普通に言えば、そんな事言わずにがんばれよ。ってとこだけどな。
向こうでバイトしますよ。今よりお金もいいし時間もできるし。
向こうでまずは公務員試験に向けてがんばりますよ。
－だな。そっちの方がいいかもな。

こんな感じで今まで多くの貧しい若者を見てきた中で、その都度何が悪いのか
考えていた。そんな中で共通して思うのはこれら貧しい若者らはみんなマジメに
働く好青年だということ。過酷な労働、極貧な毎日の生活。
マジメな青年が貧しさにやっていけない。イヤになってしまうのも当然のこと。
これは給料だけの問題ではない。待遇だけでもない。不況だけが原因でもない。
思うのは多くの大人が寄ってたかってマジメな若者を食い物にしているのではないか
ということ。
本来、社会の中でいわゆる『大人』は人としてどうあるべきか、社会はどうなれば
いいのかをより考えるべき。なのに現実はそれよりも自分達の利益の為、時として
自分達にとって都合の良い論理だけで自分たちの正当性を主張している『大人』が
多すぎるのではないだろうか。そんなことを思った今日この頃。